| 最終話 愛と死(3/6) |
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秀雄の部屋
秀雄はコンクールに出かける準備をして部屋を出ようとしている。 「忘れ物ないですよね?」 「はい。」 「タクトは?」 「えっ?」 秀雄は持っているバックを開けて確認した。 「ある。ちゃんとある。」 「緊張してますね。」 「少し。」 「じゃ、コンクール行きましょう。」 「はい。」 みどりは出かける前に台所の電気を消そうとした。 「あっ、蛍光灯換えなくちゃ。」 その蛍光灯はチカチカと点滅して今にも消えそうだった。 「新しいの買ってあります。」 秀雄は押入れから新しい蛍光灯を取り出して台所に置いた。 「帰ってきてから換えるから。」 「はい。」 秀雄はその点滅している蛍光灯の電気を消した。 そして秀雄とみどりはコンクールが行われている会場に行くことにした。 コンクール会場 理事長が秀雄のコンクールの様子を見に会場に入ってきた。 「理事長、こっちです。」 先に来ていた麗子は理事長(大杉漣)を見つけると手をあげた。そこには勝たちもいた。 理事長は手を上げて麗子たちのいる席に行った。 控え室では生徒たちが緊張してその出番を待っていた。 「みなさん。僕たちの出番です。」 秀雄が出番が来たことを生徒達に告げた。 生徒達は椅子から立ち上がった。 「今日の二次予選を通過できるのは5つの学校です。来週の決勝を目指してしっかり歌いましょう。」 そして二次予選が始まった。 生徒達は秀雄の指揮とみどりの伴奏で『この道』を歌った。この歌は秀雄が小さい頃よく教会で歌っていた歌だった。 生徒達は日頃の練習の成果を発揮して一生懸命歌い切った。それと同時に秀雄の手からタクトが落ち崩れるように倒れてしまった。 「秀雄さん!」 みどりは倒れた秀雄のそばに駆け寄った。生徒たちも秀雄のことが心配で駆け寄った。 観客席から見ていた理事長たちもステージ上に上がって来て秀雄の容態を心配していた。 病院 勉三のいる病院に運ばれて来た秀雄は意識がなかった。秀雄はそのまま処置室に運ばれた。 「中村さん!中村さん!」 勉三は秀雄の顔を叩いて意識を確認しようとしたが、秀雄は反応しなかった。 助手は処置しやすいように秀雄のシャツを切り裂いて上半身裸にした。 「心電図、血圧。ルートと一緒に採血。」 勉三は助手に指示を出した。 「酸素5リットル!マスク。」 秀雄の口には酸素ボンベのマスクがつけられた。秀雄の容態は一刻を争う状況だった。 勉三は秀雄の瞳孔を確認した。 待合室ではみどりと隆行が秀雄の容態を心配している。 「呼吸停止。」 秀雄の呼吸が停止してしまった。勉三が呼吸回復のための処置(アンビュ−バックによる用手的補助呼吸)によるを施すことにした。 しかし心電図の波がフラット状態になり今度は心停止状態になってしまった。 勉三は蘇生心臓マッサージをすることにした。 コンクール会場 控え室では生徒達が秀雄の容態を心配している。 めぐみ「中村先生、大丈夫ですよね?」 「もちろんだよ。中村先生にはちゃんと主治医がついているんだから。」 教頭は生徒達に話していると予選の結果を知らせるアナウンスが流れてきた。 「予選の結果を発表します。決勝進出の5つの高校は・・・大倉商業高校、ていせん高校、桜学園、中央高校 (高校名は漢字が分からないので当て字です)・・・陽輪学園です。」 「やった!」 生徒達は予選通過したことを喜んでいた。 「よし。」 貞夫も拳を上げて喜んだ。 麗子「決勝ね、中村先生に知らせなきゃ。」 病院 その頃秀雄は心臓停止状態のままだった。 勉三は額に汗をかきながら必死で秀雄を蘇生させようとしていた。 秀雄は勉三の必死の蘇生処置のおかげで一命を取り止めたが、体にたくさんの管を通され絶対安静の状態だった。 「命は取り止めましたが、胃からの出血はもう止められません。物は食べられませんし、ずっと輸血が必要になります。」 勉三は診察室でみどりと隆行に秀雄の容態を説明した。 「退院できることはもうないんですね?」 「はい。今日のところは大丈夫ですが、今後はいつ急変してもおかしくない状態です。ご家族の方は心の準備が必要かと思います。」 みどりと隆行はそれを聞いてショックを受けていた。 みどりは勉三の説明を聞いた後、秀雄のベットのそばに座って秀雄の様子を見ていた。 後から隆行が病室に入ってきた。 「一端帰ろう。入院準備もしなくちゃならないし。」 「うん。」 みどりと隆行は秀雄の入院の準備のために部屋に一度戻ることにした。 秀雄の部屋 みどりと隆行が部屋に帰ったころにはもう夜になっていた。 「大丈夫か?」 「もう・・・この部屋には戻って来れないんだね・・・」 「体休めなさいよ。長い1日だったんだから。」 「うん。」 みどりは台所の電気をつけると蛍光灯がチカチカと点滅していた。 みどりはその点滅した明かりの中で二人の使っていた歯ブラシ、そしてマグカップを見ていた。 「換えてくれるって言ったのに・・・帰ってきたら取り替えるって言ったのに・・・帰ってきたら・・・」 みどりは秀雄が出かける前に置いていった新しい蛍光灯を抱きしめて泣いていた。 |